原状回復

原状回復ガイドライン ~経年劣化の考え方について~

入居者によりクロスに落書きされたり、喫煙によるヤニによる変色があるケースを想定してみましょう。こちらは、ガイドラインでも、落書きはもちろん、喫煙等は、「通常の使用による汚損を超えるものと判断される場合が多い」と説明されています。そのことから、入居者の責めに帰すべきものとして原状回復費用として請求できるのですが、ここで問題となるのは、その具体的な補修金額(原状回復費用の額)です。落書きやたばこのヤニでクロスが汚れたので「クロスの新品への交換費用全額を請求したい」と思うところですが、それは認められません。「経年劣化」という考え方があるからです。原状回復ガイドラインを確認してみましょう。

《原状回復ガイドラインからの抜粋》

(略)修繕等の費用の全額を賃借人が当然に負担することにはならないと考えられる。なぜなら、Bの場合(注:通常の方法でない損傷の場合)であっても、経年変化・通常損耗は必ず前提になっており、経年変化・通常 損耗の分は、賃借人は賃料として支払ってきているところで、賃借人が明け渡し時に負担すべき費用にならないはずである。したがって、このような分まで賃借人が明け渡しに際して負担しなければならないとすると、経年変化・通常損耗の分が賃貸借契約期間中と明け渡し時とで二重に評価されることになるため、賃貸人と賃借人間の費用負担の配分について合理性を欠くことになる。(略)

そこで、賃借人の負担については、建物や設備等の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させることとするのが適当である。
要するに、入居者に過失があっても、古いクロスを新品に交換する費用まで認めると、本来、経年劣化・通常損耗でオーナーが負担すべき費用(新しくする費用)が入居者の負担となり、合理性を欠くという内容です。
古いクロスであれば、その残存価値に応じて、入居者の負担額を変え、たとえば、1年程度なのにタバコのヤニ等がひどく全面張り替えとなった場合には、たとえば80%程度、3年程度であればよりクロスは経年劣化しているので、50%程度を入居者の負担と考えます。
(クロスであれば6年を耐用年数と考えます。)
このように、原状回復請求において、入居者の責めに帰すべき事情に基づくから、といって新品への交換費用が認められるものではなく、ガイドラインでは「経年劣化」という考え方に基づき、契約年数が経っていればいるほど、入居者の負担額が減ることを確認しましょう。

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