全国で、都市部から、地方・郊外への住み替え需要が増えています。コロナ禍で不動産市場にも、影響が出ていますが、不動産投資家にとっては投資エリアが変わってきたことを示しています。今回は、これらの時流をご紹介いたします。
【コロナ禍、人口が増え続けてきた東京都が転出超過に】
2020年9月、総務省統計局が発表したレポートに「郊外への住み替えの動きが起きている可能性がある」と記載され、大きな話題を呼んでいます。同省が発表している「住民基本台帳人口移動報告」によると、2020年9月に約7年ぶりに東京都の人口が転出超過となり、この傾向はその後も続いています。在宅勤務によって通勤が不要になり、都心に住む必要がなくなったので、住環境に優れて面積の広い住宅が安価で手に入る郊外に移り住む。そんな動きが起こりつつあるのでしょうか。大手不動産情報サイトでは、賃貸・売買において、2020年末、ぺージ閲覧数で前年同月比で東京23区外の伸びが顕著になっており、特に自然が残り、住みやすい環境である、都市部から50~100km圏内、新幹線や高速道路で繋がる郊外地が増えています。
【坪単価・家賃増! 郊外で起きているコロナバブル?】
今、郊外で人気を集めている地域では、土地や家賃の価格上昇も見受けられるようになってきています。そういったエリアでは、中古戸建などをセカンドハウスとして買われる方も多く、1,000万円以下の物件が売れてきています。これらは、新型コロナウイルスによって都市部住民が、本人や家族のニーズ等に応じて、多様なライフスタイルを実現するため、都市の住居に加えた生活拠点を持つ「二地域居住(デュアルライフ)」が広まりつつあるからでしょう。
暮らしの在り方も、「セカンドハウス」としての暮らし方、週末や休日のみ郊外や地方の拠点に滞在する、一定期間その土地で生活するなど、その人の働き方や家族に合わせた暮らし方が柔軟に選べるようになった世の中の流れが、注目を浴びる要因にもなっています。また、セカンドハウスは買う・売る・借りる・貸す等、不動産活用が多様化した事によって、投資にも有効になってきています。
【価値変容はコロナ収束後に起こる】
こうしたことから郊外では大きな変化が起こっていますが、大きな懸念点もあります。それは在宅勤務が継続するかどうかです。正社員のテレワーク実施率は昨年度末より、緊急事態宣言再発令後では若干減少してきています。在宅勤務は大企業では導入が目立つ一方で、中小企業ではまだ定着していません。つまり、在宅勤務の継続可否について会社の方針が決まらないうちに決断することはリスクが大きいと思われます。また、会社が在宅勤務を継続する方針を固めても、子どもがこれまで通り通学する必要があるため、ファミリー世帯にとって新たな物件の購入は簡単ではありません。もう1つの懸念は、都市部に構えるマンションの需要が底堅いことです。近年の再開発によってマンションなどが次々と建てられ、周辺にはスーパーや、病院等のインフラが整備されたことで、自然環境など郊外ならではの要素を求めない限り、あえて郊外へ移住する必要性は薄れているのも事実です。今のところ、コロナ禍でも大都市圏から郊外に多くの人が移り住むようにはなっていません。それでも利便性や資産性が強調されていた住まいへのこれまでの価値観は、コロナ禍をきっかけに見直され、それぞれのライフスタイルに応じた多様性が進む余地はあるでしょう。人々が住まいのあり方を再考したことは間違いないです。不動産投資家は、これらの時流も読みながら、今後の投資判断を進めて行く必要があるでしょう。